突発性ヴァンパイア・ガール!
カチャン。


引き金を引いたと思われる音が響いた。


ペシン。


これは引き金が引かれて発射した弾丸が私にヒットした音だ。


軽い痛みと同時に視界の赤みが引いた。


フィルターは消え、世界は元の色を取り戻した。


思考回路も再び巡りだし、体も私の意志で動くようになって、一つの疑問が生まれた。


さっき、私は吉崎君に撃たれた。


確かに、撃たれたはず。


それなのに、痛みが少ない。


というか、ほぼない?


血も出ていないみたい?


体のあちこちを見ても、どこも怪我をしていない。


「戻ったか」


何が起こったんだか分からないままでいると、吉崎君が言った。


「吉崎君!」


吉崎君は溜息を吐いた。


「あんた、また吸血鬼になりかけてた」


「うっそ!」


「俺、あんたに殺されかけたし」


吉崎君は首元をさすりながら、不機嫌そうな様子で言った。


「ご、ごめん…」


「まぁ、お互いに怪我しなくて良かったけどな」


吉崎君はまたため息を吐いた。


「そ、そうだ、さっきの銃って…!」


私が聞くと、吉崎君はまだ右手に持ったままだった銃を軽々と持ち上げて「これか?」と言った。


「ゴム鉄砲だけど?」


「ご、ゴム鉄砲!?」


私はまじまじとそれを見た。


「こ、これが!?」


ゴム鉄砲は、弾丸に輪ゴムを使う、おもちゃのような銃だ。

割り箸なんかで簡単に作れるし、私自身作って遊んだこともある。


「ゴム鉄砲って、こんなに立派になるの!?」


なんだか普通の銃のようにも見える。


これが、ゴム鉄砲だなんて、言われても簡単に納得できない。


それくらいに、吉崎君の持つゴム鉄砲はかっこいい。


子どものころの私には考えられないほど、洗礼されたフォルム。


思わず見入ってしまった。


「吉崎君って、こんなのも持っていたんだね!」


私がそういうと、吉崎君は思いっきり顔をしかめた。


「誰のせいでこんなもんを持ってると思ってんだよ」


吉崎君は言った。


「あんたのためだよ」


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