突発性ヴァンパイア・ガール!
「え?」


耳を疑わずにはいられなかった。


「あんたは突発性吸血鬼症候群だ。あんたが吸血鬼化して、あんたを止めなきゃいけない時、あんたに近寄れない状況だってあるかもしれない。その時のための銃だ」


吉崎君が、私のためにそんな備えをしてくれていたなんて。

少し感動していると、吉崎君は銃をしまいながら私に聞いた。


「なあ、あんたに聞きたいことがあるんだけど」


「何?」


「あんたは、寅木が好きなのか?」


「は?」


何をいきなり。

吉崎君の質問に驚かざるを得なかった。

だってあの吉崎君が、こんな質問をしてくるんて。


「いいから答えろよ」


吉崎君は若干苛立たせながら答えを催促した。


「私は侑也が好きだよ」


ほとんど条件反射で答えた。

付き合っている、大好きな彼氏だ。

嫌いなら付き合っているわけがない。


「どうして好きなんだ?」


「え…?」


吉崎君の目は真っ直ぐだった。

ずっと見ていたら、瞳の奥、心まで覗かれてしまうんじゃないかと思うほどに、真っ直ぐだった。


「…理由なんてない。

侑也のことが好き。

だから好きなんだよ」


そう答えると、吉崎君は「ふーん」と言った。


「あっそ」


至極面倒くさそうな口調だ。


「何それ!聞いてきたのは吉崎君じゃん!」


「いや、こんな至近距離でノロケられて嫌な顔しない方がおかしいだろ」


「だから、聞いてきたのは吉崎君じゃん!」


私が言い返すと、吉崎君はそれを無視して私に言った。


「あんたはファイ、最も吸血鬼に狙われやすい存在だ。

何かあったら俺を呼べ」


たまには良いことを言ってくれる。

ジーンと感動していると、吉崎君は更に言葉を続けた。


「あんたはバカで間抜けで、見てらんねぇからな」


真顔でそう付け加えた。


…前言撤回。


「最後の一言は余計だっつーの!」


「だってそうだろ?吸血鬼に追われて誰が行き止まりに逃げ込むかよ」


「そ、それは…!」


た、確かに、言い返せない…!
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