突発性ヴァンパイア・ガール!
「もう俺行くから」
吉崎君は腕時計を見ながら言った。
「次の授業がすぐに始まる。
せいぜい遅刻すんなよな」
「サボリ魔に言われたくない!」
「んだと、てめぇ。人がせっかく忠告してやったのに」
「それはありがとう。じゃあ私もうクラスに行くね!」
数歩走ったところで、振り返った。
「ありがとう。本当に、ありがとう」
吉崎君は面食らったような顔をしていた。
なんだか吉崎君に勝ったような心地がして、少し嬉しい。
私は走った。
ここから教室までは遠い。
走りながら、吉崎君の問いの答えを考えていた。
『あんたは寅木が好きか?』
『どうして好きなんだ?』
私は好きだ。
好きなんだ、侑也のことが。
大好きなんだ。
それなのに、なんでかな。
私は自分の胸に手を当てた。
分からなくなるんだ。
自分の気持ちなのに、自分のことなのに、分からなくなる。
さっきまで分かっていたはずなのに。
さっきまで疑いようもなかった、分かり切っていた感情を必死に思い出そうとして、
分かりかけて、
分かったような気がして、
そして、突然分からなくなる。
霧のカーテンに隠されてしまったような、そんな感じだ。
確かにそこにあるはずなのに、まるで何も見えない。
手を伸ばしても届かない。
この手をすり抜けていく。
私の気持ちは、どこにあるの。
吉崎君は腕時計を見ながら言った。
「次の授業がすぐに始まる。
せいぜい遅刻すんなよな」
「サボリ魔に言われたくない!」
「んだと、てめぇ。人がせっかく忠告してやったのに」
「それはありがとう。じゃあ私もうクラスに行くね!」
数歩走ったところで、振り返った。
「ありがとう。本当に、ありがとう」
吉崎君は面食らったような顔をしていた。
なんだか吉崎君に勝ったような心地がして、少し嬉しい。
私は走った。
ここから教室までは遠い。
走りながら、吉崎君の問いの答えを考えていた。
『あんたは寅木が好きか?』
『どうして好きなんだ?』
私は好きだ。
好きなんだ、侑也のことが。
大好きなんだ。
それなのに、なんでかな。
私は自分の胸に手を当てた。
分からなくなるんだ。
自分の気持ちなのに、自分のことなのに、分からなくなる。
さっきまで分かっていたはずなのに。
さっきまで疑いようもなかった、分かり切っていた感情を必死に思い出そうとして、
分かりかけて、
分かったような気がして、
そして、突然分からなくなる。
霧のカーテンに隠されてしまったような、そんな感じだ。
確かにそこにあるはずなのに、まるで何も見えない。
手を伸ばしても届かない。
この手をすり抜けていく。
私の気持ちは、どこにあるの。