突発性ヴァンパイア・ガール!

転校生と歓迎会

翌日、学校に来てクラスメイトに挨拶をすると、私はそのまま自席に着いて窓の外を眺めた。


『良かった』

『気を付けてね』


あの微笑みが、あの声が、昨日からずっと脳内でリピートされている。


忘れられないんだ。


たった、1ミリさえも。



朝の通学路、あの角から出てくるんじゃないかって。


信号待ちをしている、あのたくさんの人の中に紛れているんじゃないかって。


人だかりを見つけては、ずっと目で追いかけて。



あなたの姿を、探してる。



叶うなら、もう一度。


あなたに、会いたい。



「うらら、うららってば!」


「うわあぁっ!あ、亜美!?」


「ど、どうしたの?」と平静を装って尋ねると、「それはこっちのセリフよ!」と怒られてしまった。


「ぼうっとするなんて、どうしたのよ?」


うらららしくないわ、と心配された。


亜美は眉を下げて、私をまっすぐに見つめていて。


心配させていることが、とても申し訳ないと思った。


とっさに笑顔を作った。


「何もないよ、大丈夫」


けれど笑ってみせても効果はなくて。


「嘘。うららが朝から何も話さないなんて、大丈夫なわけがないじゃない」


亜美は穏やかな顔になって、私に尋ねた。


「何があったの?」


「...実は」


そこでチャイムが鳴り響いた。


「...後で聞くわね」


亜美はそう言い残して席に着いた。


担任は教室に入ってきて、教卓に両手をつくと「今日は皆に紹介したい人がいる」と切り出した。


「入ってきていいぞ」


扉に向かって合図をすると、ガラリ、と教室の引き戸が開く音がして、人が入ってきた。


教室の空気が騒めきだす。


その人物の姿を捉えた瞬間、思わず息を呑んだ。


「う、そ」


口元を手で覆った。


そこにいたのは、私が願っていたひと。


会いたいと思っていた、侑也さん、その人だった。


< 7 / 119 >

この作品をシェア

pagetop