突発性ヴァンパイア・ガール!
亜美は私を引きはがすと、息を整えながら言った。


「抱き着くのは私じゃなくて侑也にしなさいよね、バカップル!」


「ひどい!私の愛を受け取ってくれないのね!」


うわーん、と私は泣いたマネをした。


「泣き脅しにかかったって無駄よ。それから下手な嘘泣き、やめなさいよ!みっともないわ!」


「…ほーい」


あっさり泣きマネはバレていた。

確かにこういうクールなところが亜美らしいと思うし、好きなんだけど。


「バカなことやってないで、次は移動教室よ」


行きましょう、と亜美は言った。

その手には次の時間で使うテキストやノートがすでにあった。

さすが、亜美。

常に冷静で、しっかり者。


心の中で関心しながら、私も急いで自席に戻りテキストやノートを持つと再び亜美のもとに戻った。


「あら、今日は忘れ物していないのね」


亜美が薄笑いを浮かべながら言った。


…最近亜美が毒舌だと思うのは私だけですか?


「いつも忘れ物しているわけじゃないから!」


確かに忘れ物していることの方が多いかもしれないけど!


「そうかしら?」


「そうですよ!っていうか、こんなバカな言い合いしてる場合じゃないよ!授業に遅れる!」


私は亜美の背中を押すようにして歩く。


梨花ちゃんは私と亜美を見ながら笑った。


私も亜美も、つられて笑った。



例えば、今。


幸せとは何か、だとか。


平和とは何か、だとか。


そんなことを問われたとしたら。


私は、きっと


今、このとき、この瞬間だと


そう迷わずに答えるのだろうと思う。


心優しい親友がいて、


大好きな彼氏がいて、


私を信じてくれる友達もいる。



これ以上、何を望むだろう。



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