突発性ヴァンパイア・ガール!
暗い階段をかけ登って、少し乱暴に扉を開けた。


叫び声のような扉の開く音が響くと同時に、空の青が目に飛び込んでくる。


鮮やかで、穏やかで、優しくて。


空だけは、いつもと変わらないでいてくれた。


私は崩れるように座り込んだ。

下を向き、手で顔を覆った。


空の青が眩しかった。


眩しくて、目が染みた。



「何やってんだ」


後ろから声が聞こえた。


顔をあげる。


「吉崎君…」


吉崎君が立っていた。


「こんな時間にこんなところで何してんだよ。

もう授業が始まるぞ」


「…サボリ魔に言われたくない」


ちょうど私がそういうとチャイムが鳴り響いた。

朝礼開始を告げるチャイムだ。


「クラスに行かないのか?」


思わず言葉が詰まった。

行きたい気持ちと行きたくない気持ちが混ざって、その答えは口から出なかった。


「…吉崎君は?」


「行かねぇよ。面倒くさい」


吉崎君はため息を吐いた。


サボリ魔の吉崎君らしい言葉だなあと思った。


そっか、と相槌を打とうとしたけど、吉崎君が「それに」と言葉を続けた。



「こんな状態のあんたを置いて行けねぇだろ」



吉崎君は迷わずにそう言った。



「うわ、なんで泣くんだよ」



吉崎君はあからさまに驚いたような顔をした。



「ごめ…でも…!」



吉崎君がこんなにも優しいと知らなかったの。


吉崎君の言葉がこんなにも暖かいと思わなかったの。


こんなにも心をいっぱいに満たすことも。



吉崎君はため息交じりに呟きながら私の隣に腰を下ろした。


黙ったまま、眩しそうに空の青を眺めていた。



「あのさ」


「ん?」


「話、聞いてくれる?」


自分の手をぎゅっと握って尋ねた。


面倒くさい、そう言われるかと思ったけれど。


「聞くくらいなら」


吉崎君は、やっぱり優しかった。

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