突発性ヴァンパイア・ガール！
いくつもいくつも溢れては、頬を伝った。


ずるい。


ずるい。


こんな、心がぼろぼろになってしまったこんな時に、そんなことを言うなんてずるい。


「吉崎君のバカ…！」


泣きながらそういうと、吉崎君は怒った。


「バカとはなんだ、バカとは！」



「でも、ありがとう」


吉崎君がいてくれて良かったと、そう思った。


ゴシゴシと乱暴に腕で涙を拭って、口角をあげて笑う。


吉崎君は一瞬目を見開いたけど、すぐに穏やかな顔をした。



「本当のこと、聞いてみな。

直接、香宮や寅木に」



吉崎君の言葉に、ゆっくりと頷いた。


丁度その時、チャイムが鳴った。

休み時間を告げるチャイムだ。


「行ってくるね」


私が立ち上がると、吉崎君が私の腕を掴んだ。



「忘れんなよ。


俺はあんたを信じてるから」



どこまでも真っ直ぐな目が私を捉える。


私はその目を見つめ返しながら、にっこりと笑顔で返した。


「ありがとう」


それから私は屋上を後にした。



本当のことを言えば、侑也や亜美に聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちが入り混じってぐるぐると渦を巻いている。


できることなら、聞きたくない。耳をふさいでしまいたい。


けれど、このままじゃダメだということは分かっている。


それに、こんな状況になっても私を信じてくれる人はいる。



前に、進もう。



拳を強く握りしめて、心を奮い立たせた。

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