突発性ヴァンパイア・ガール!
「紹介する。転校生の寅木(とらき)だ」


先生は黒板に侑也さんの名前を黒板に書きながら、自己紹介を、と侑也さんに言った。


「始めまして。寅木です」


よろしくお願いします、と下げていた頭を上げた瞬間、女子が騒めいた。


かっこいい、イケメン、優しそう。


よくよく聞けば、そんなことを言っている。


そういった声に私も賛同していた。



侑也さんを見ていると、ぱちり、と目が合った。



その瞬間、侑也さんは、ふっ、と柔らかく微笑んで。


どくん。


心臓が止まったと錯覚するくらい、心臓は大きな音を鳴らして。


これ以上侑也さんの目を見ていたら、本当に心臓が止まるんじゃないかと思った私は、他にどこを見たら良いのかも分からなくなって、視線をさまよわせた。


「席は、そうだな。吉崎の隣が空いているな」


じゃあそこで、と担任が侑也さんに伝えた。


侑也さんは席を把握したのか、頷くと、指定された席へと移動した。


侑也さんが、どんどん近づいてくる。



「よろしくね」



私の席とすれ違う瞬間、にっこりとあの日と同じように、穏やかに微笑まれた。


突然の出来事に固まってしまって、私はただ頷くことしかできなかった。


本当は、こちらこそ、だとか何か言いたかったのに、何も言えなかった。



「よろしく」


一方、侑也さんに挨拶された吉崎君は「どうも」と、それしか言わなかった。


転校生に何も興味がないのだろうか、すぐに窓の外に視線をやっていた。


よく分からない人だ。


私が今まで同じクラスになった生徒の中で話したことがないのは、吉崎くんだけだ。


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