突発性ヴァンパイア・ガール!
廊下から教室へ、一歩踏み出した。


教室に踏み入れた瞬間、ぶわりと恐怖が襲い、心を覆い尽くそうとした。


だけど心は恐怖に呑み込まれなかった。


私は独りじゃない。


吉崎君がいてくれる。


その事実だけで、そう思い出すだけで、こんなにも気持ちが違う。


昨日ぶりの教室は、昨日となんら変わりなかった。


机の配置も、

授業の板書が残る黒板も、

朝日の差し込み方も、


クラスメイトの厳しい視線も。


私が教室の中へ、自分の席へと向かうだけで、クラスメイトの無言の矢がいくつも突き刺さる。


けれど、それはそんなに気にならなかった。


私は独りじゃないと分かっていたし、それにやらなきゃいけないこともあるから。


「亜美、侑也」


少し落ち込んでいるようなそぶりをしている2人に近づき、話しかける。


その瞬間、教室から音が消えた。


クラスメイト全員が話すことをやめ、私が何を言い出すのかと、私達3人を見ていた。


「うらら…」


亜美も侑也も大して表情を崩さなかったけれど、微かに驚いた表情を見せた。


私は両手を握りながら大きく息を吸い込んだ。


「2人と話したいことがあるんだ。

今日の放課後、講堂裏に来てほしい」


2人は目を見開いた。


「分かった、いいよ」


そう言ったのは侑也だった。


いつもと変わらない優しい笑みで私の提案を受け入れた。


亜美は驚いた様子で侑也を見た。


しかし侑也が諭すような目で見つめ返しながら、亜美び尋ねた。


「亜美はどうかな?今日は用事がある?」


「…今のところ、用事はないわ」


亜美は戸惑いながら答えた。


「じゃあ、約束だね」


私がそう言った瞬間、チャイムが鳴った。


教室に担任が入ってきて、朝礼が始まる。


私は2人から離れて自席に着く。


私は大きく深呼吸した。



最初の難関はクリアした。



しかしこれはあくまで始まりにすぎない。



本題は、ここからだ。



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