突発性ヴァンパイア・ガール!


休み時間になっても、ざわめきは止まるどころか勢いを増していた。


侑也さんの周りには男女問わない人だかりができていた。


どこから来たのか、どこに住んでいるのか、好きな食べ物、趣味は。


そんな諸々の質問一つ一つに、侑也さんは丁寧に優しい笑顔で答えている。


私は侑也さんを取り囲む輪の中に入ることはせずに、ただぼうっと、それを見ていた。


「うらら、いいの?」


いつの間にか隣にいた亜美が私に尋ねた。


「いいのって、何が?」


「侑也の近くに行かなくてもいいのかってことよ。みんなが侑也の近くにいるのに。うらら、こういうお祭り騒ぎみたいなこと、好きでしょ?」


そうだね、と軽く相槌を打った。


確かに、こういう非日常的な楽しい感じのことは好き。わくわくするよ。


「でも、これ以上囲む人数が増えると、侑也さん、きっと大変だよ」


今、このクラスの中で侑也さんを囲っていないのは、私、亜美、そして吉崎君だけだ。


吉崎君はどこかに行ったのか、自席についていないけど。


「うららは本当に優しいわね」


亜美が慈悲に溢れた顔で私の頭を撫でた。


「…よしよし」


「よしよしって、もはや犬扱い!?」


「大丈夫。うららみたいな犬を飼うつもりはないわ。安心して」


「安心してとか、そういう問題じゃないよね!?それよりも、犬扱いのことを否定しないんだね?!泣くよ?もう泣いてもいいかな?!」


ほとんど半泣きの状態の私に、亜美は首を傾げた。


「え?どうしてうららが泣くの?」


「尋ねるの?それ、尋ねるの?!尋ねる前に私の話聞いて?お願いだから、文脈で分かって?察して?!」


ああ、もう嫌だ、このお方。


普段はクールビューティーなしっかり者のくせに、どうしてこんなにボケてくるのさ…!


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