突発性ヴァンパイア・ガール!
「うららが言っているのは噂のことでしょう?

僕と亜美が付き合ってたのに、うららが亜美から僕を取ったんだという噂。

もし僕が亜美と付き合っていないと言ったら、うららは僕の言った言葉を信じられるの?

本当に付き合っていないと思える?」


侑也らしくないと思った。

こんな棘のある話し口調、いつもの侑也じゃない。


いつもの侑也はもっと穏やかで、優しくて、包み込んでくれるような温かさがあるのに。

今はそれを感じ取ることができない。


「信じられないでしょう?」


「...そうだね、信じられないよ」


私は侑也の言葉に頷いた。

私は両手を握った。


「だって、あの時、廊下で亜美と侑也が2人で話しているのを聞いたから!」


侑也は目を見開いた。

そしてまたいつものように目を細めた。


「そうか、聞いていたんだね」


ただ、その雰囲気はいつもと違う。


暖かくない。


優しくもない。


むしろ、冷たくて、怖い。



「...そうだよ」


侑也は言った。


「うららが聞いた通り、僕と亜美は付き合っている。

うららに出会うずっと前から」


私は目を見開いた。


ぐさりと矢が突き刺さる。


傷口に塩を塗り込まれたように、胸が痛む。


2人が付き合ってることは、この前も聞いた。


だから知っていた。


それが本当だと分かっていた。


だけど本当は否定してほしかった。


嘘だよって。


違うよって。


言ってほしかった。


私があの日階段で話す2人の声を隠れて聞いたこと。


その全てが嘘だったら。


夢だったら。


きっと私は大切な2人とまた穏やかな日々を送れるのに。



「どうして...?

どうして侑也は亜美と付き合ってるのに、私に告白なんかしたの?」


泣きそうになった。

叫びそうになった。


「侑也は私のこと、好きだったの?」


昂る感情を押さえ込んで、尋ねる。

声は少し震えた。


「うん、好きだよ」


侑也は微笑んだ。

けれど眼鏡の向こう、瞳の奥は笑ってなどいなかった。


どうしてだろう。


好きだと伝えてくれたのに。


私もその答えを聞きたかったのに。


どうしてだか分からないけれど、嬉しいという感情が湧いてこなかった。


ただあるのは、恐怖と嫌悪感。


どうしてだか分からないけれど、侑也が怖かった。


その笑みが、恐ろしかった。

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