突発性ヴァンパイア・ガール!
「侑也に話があるの」


なぜか呆然としていた侑也がハッと顔をあげた。


「何かな?」


「別れてほしいの」


はっきりと、前を見据えて言った。


「え…?何を言ってるの…?」


「私と別れてほしいの」


侑也は目を見開いた。


「ど、どうしてそんなことを言うの?

僕はうららのことが好きだと言ったよね?

亜美とも別れるって言ったよね?」


こんなにも焦っている侑也の姿は初めて見た。


けれど私は極めて落ち着いた口調で言葉を紡いでいく。


2人を呼び出したときから、決めていたことだから。



「言ったよ。

確かに言ったよ。聞いていたよ。


だけど、私は侑也のことを友達として好きなの。


恋愛対象として好きなわけじゃないんだよ。


そのことにようやく気付けたんだ」


私の言葉に、侑也は絶望したような顔をした。


「そん、な…!」


侑也は座り込んでしまった。


「ありえない、ありえない!」


何かにおびえるように、声を震わせた。


「こんなことになるなんて、ありえないのに…!」


侑也は立ち上がると、私の両肩を掴んだ。


「ねぇ、嘘だよね?うらら。

僕と別れるなんて、嘘だよね?

僕のことが好きじゃないなんて、嘘だよね?

嘘なんだよね?

冗談なんだよね?

そうなんだよね?!」


侑也は必死の顔で私を追いつめる。


「違う!本音だよ!私の本心だよ!」


そんな必死な侑也には、私の叫び声は届いていないようだった。


「冗談はよくないよ、うらら。

こんな時に冗談なんて!」


違うと何度言っても聞いてくれない。


何と言ったら聞いてくれるんだろうと思っていると、突然侑也が真横に吹っ飛んだ。


「うっさいんだよ、あんた」


吉崎君が蹴ったようだ。


「言葉を聞き入れろよ。逃げんな」


いつも思うが吉崎君の言葉はぶっきらぼうだ。


嫌味を言っているわけじゃない。


言いたいことをそのまま言っている、そんな感じがする。


きっと言葉をオブラートに包む方法を知らないのだろうと思った。


「侑也、お願い。私と別れて。

もう侑也と付き合うことはできない。

もうダメなんだよ。私がダメなんだよ」


でも、今は少しだけ吉崎君の話し口調を見習おう。


そりゃ、吉崎君みたいにズバズバ言うわけじゃないけど。


私の伝えたいことを、私の言葉で。


遠回しにして曖昧にするんじゃなくて、はっきりと。


届くまで、何度だって。

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