突発性ヴァンパイア・ガール!
吉崎君に蹴られて呆然と座り込んでいた侑也の目の前に座り、その両肩を掴んだ。


「侑也、私の目を見て」


そう言うと、侑也はハッと私の方を見た。


その瞳は恐怖と絶望で揺れていた。


侑也がまさかこんな目をする日がくるなんて、到底想像することもできなかった。


「私と別れて。

お願い。

私の好きなひとは侑也ではないの」


私はしばらく侑也の瞳を見つめた。


私は、この瞳に捕まった。


この瞳の虜になった。


優しくて穏やかで、魅惑的なこの瞳を好きになっていた。


その瞳に私を映していてほしいと思っていた。


だけど、今は違うの。


今、私の心を離さないのは、

侑也とは別の人。



「…僕のこと、好きじゃないと、どうして気づいたの?」


侑也は掠れた声で尋ねた。


どうして、と言われても。


答えは単純明快で、けれど、他人に説明するにはとても難しい。


理由が曖昧なわけではないけれど、どの言葉で表せばいいのか分からない。


けれど、言葉で表すならば。


「心に、響いたの」


この言葉が、しっくり当てはまる。


「響いた?」


侑也は顔をしかめた。

何を言っているのか分からない、と言っているような表情だった。


「心に響いたの。いくつもの言葉が。

私に安心をくれた。希望をくれた。


そこで疑問に思ったの。


私の好きなひとは本当に侑也なのかなって」


侑也はしばらく目を見開いて固まった。


「…愛の力だね…」


侑也は本当に小さな声で何かを呟いた。


「え?」


聞き取れなくて聞き返すけれど侑也は首を振った。

その表情は嬉しそうでもあったし、悲しそうでもあった。


「ねぇ、教えて。

侑也と亜美は、私に嘘をついていたの?」


心臓がどくんどくんと大きな音で心拍する。


侑也は私の目をじっと見ながら、クスッといつものように微笑んだ。


「半分は本当。

もう半分は嘘だよ」


想像していなかった答えに目を見開いた。



言葉も、笑顔も、優しさも。


その全てが嘘だと思っていた。


でも、全部が嘘ではなかった…?
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