突発性ヴァンパイア・ガール!
亜美と侑也が欲しかったもの。

それと私は何の関係がある?


「欲しかったものって、何?」


私が尋ねると亜美は桜色の唇をニッとひきつらせて、私の腕をグイッと引っ張った。


「うわ!」


急に腕を引っ張られてバランスを崩す。


「私がほしかったものはね」


亜美は私の制服の袖を肘の辺りまで間繰り上げると、そこから白く長い人指し指で、すう、とゆっくり私の腕に線を引くようになぞった。


「あなたよ、うらら」


亜美の爪が肌に食い込んで、すうっと赤い線になると、やがてぷくりと血が溢れた。

小さな痛みが走る。



「わ、たし…?」


亜美の答えは私の予想を遥かに超えていた。


「私が欲しいって、どういうこと?」


私の腕からぷくりと溢れた血は腕から滴り落ちた。


亜美は熱っぽい瞳で私の腕を引き寄せると、私の腕に顔を近づけその血を舐めとった。


思わず悲鳴を上げた。


顔をあげた亜美は、いつもの亜美とは違った。


血色の悪い青白い肌に、紅い瞳。

そして口元からのぞかせる、鋭い牙。


私の知っている亜美ではなかった。



「あ…あ…亜美…?」


恐怖で体が震える。


後ずさりしようとしても、腕を掴まれているためあまり距離をとることができない。


「私達が欲しかったのは、うらら、あなたよ」


亜美は繰り返すように言った。



「もっといえば、私達が欲しかったのは黄金比の血液。


そう、ファイよ」



私は目を見開いた。


「じゃあ、亜美は…侑也は…」


「吸血鬼」


私の言葉を引き継いで、吉崎君が言った。


私も亜美も驚いて、吉崎君の方を見る。


吉崎君は冷たいまっすぐな目で、銃を構えていた。

その銃口の先は亜美がいる。


「あら、分かっていたの?」


亜美は私の手を離すと、動揺も見せずに吉崎君を見つめ返す。


「あぁ」


吉崎君は頷いた。


「最初から疑ってはいた。

確証はなかったがな」


吉崎君は固い声ではっきりと言った。


「へぇ。それはどうしてなんだい?」


侑也の問いに、吉崎君は素直に答えた。


「橋本から話を聞いていれば、大体は予想がつく」


それに、と吉崎君は付け加えた。



「俺が最初に疑ったのは、香宮じゃなくて寅木だった」



吉崎君は、ちらり、と侑也を横目で見た。


侑也は「へぇ」と不敵の笑みを浮かべている。


私はといえば、吉崎君の最初の言葉から驚きを隠せなかった。


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