現代のシンデレラになる方法
俺の部屋へ着きドアを開けてやると、遠慮がちに上がるひなた。
「お、お邪魔します……っ」
「どうぞ」
そう言ってリビングへひなたを連れていく。
「適当に座っていいから」
「は、はい」
すると、促されるままソファーにちょこんと座る。
「テレビ見て待ってて。風呂入るだろ?」
「あ、あの、もう何もお構いなく……っ。私はどこでも寝れればいいので」
隣の寝室に行く俺に、慌ててひなたの声がかかる。
大体言いそうなことは分かってるからスルーして、クローゼットから適当に取り出したシャツと短パンを差し出す
「これ寝間着な」
「あ、ありがとうございます……っ」
「今、風呂沸かすから。ちょっと待ってて」
風呂場へ向かい、軽く掃除して浴槽に湯を貯め始めた。
リビングへ戻るとそわそわ落ち着かない様子のひなた。
俺はひなたの隣に座り、ひなたの前にあったテーブルの上のリモコンを取ろうとするとびくっと反応する。
俺の一挙一動にびくびくする姿はまるで小動物のようだ。
そんなに人の家って緊張するものなのか。
何か緊張をほぐせそうな話題を考えていると、ひなたの方から口を開いた。
「先生、よかったら軽いお夜食でも作りましょうか……?」
「いいな、軽く何か食べたいかも。でも俺んちの冷蔵庫、酒とつまみ位しか入ってないぞ」
「僭越ながら、冷蔵庫を拝見しても……」
「ははは、すごい敬語だな。あるやつなら何でも使っていいから」
「は、はい、ありがとうございます」
そうして数分後できあったのは、プリンのような見た目の茶わん蒸し。
俺んちの冷蔵庫、市販のつまみ以外卵位しかなかったもんな。
よくそれで茶わん蒸しなんて思いついたな。
しかしこんな短時間でつくれるものなのか、茶わん蒸しって。
蒸し器とか使わないといけないんじゃないのか?
「うちに蒸し器なんてなかっただろ?どうやって作ったんだ」
「すいません、ちょっとズルしてレンジで作りました」
「だからさっき音がしたんだな。へー、レンジで作れるとは」
一口食べると、おいしいんだけど、ちょっとした違和感を感じた。
塩こしょうだけじゃできない味付けだ。
めったに自炊なんてしないから、ろくな調味料なかったはず。
だしの素だとかそんな類のものなかったはず……。
「え、何からだしとったの?」
「す、すいません、あの冷蔵庫に入っていたするめをちょっとおだしに使わせてもらいました」
「はぁー、なるほどな。するめでだしとれるもんなんだな」