現代のシンデレラになる方法


「どうぞ」

「あ、あの失礼します……っ」

そう言って俺に背を向けベッドの端っこに横たわるひなた。

「いやいや、どんだけ警戒されてんの俺」

「け、警戒してる訳じゃ……っ」

「だけどそんなに端っこで寝たら確実落ちるだろ」

「だ、大丈夫です。わ、私のことはお気になさらず」

言っても聞かないため、もう好きにさせることに。

寝る前に話しておきたくて、頼りない背中に話しかける。

「ひなた」

「な、なんですか?」

「あのさ、俺ももういい年だしお前とのことちゃんと本気だからさ。だから、もうちょっと頼って欲しいんだよ。人に気い遣ってばっかのひなたには難しいんだろうけど」

するとひなたの肩がふるふると震え出した。

鼻をすする音と手の動きで泣き出したことに気づく。

「おい、なんで泣くんだよ」

「だ、だって先生が優し過ぎるから……っ」

むしろ優し過ぎるのはお前だろう。

自分のことは顧みず、俺にばかり尽くそうとする。

「せ、先生の彼女っていうだけでも恐れ多いことなのに……っ、そんな風に優しくされると、嬉しくて幸せ過ぎて怖い位です」

大袈裟だなー。

しかし、またそういうことを言い出す。

だから放っておけないんだよ。

だから……、


「先生、私、今までの人生の中で今が一番幸せです」

か細く小さな声だったが確かにはっきり聞こえた。

あぁ、だから何が何でも誰よりも幸せにしてやりたいと思うんだ。

たまらず彼女の震える体を後ろからそっと抱きしめた。

「そうか、じゃどんどん上乗せしていかないとな」

え、え、えっと予想通り狼狽えるひなた。

きっとまた困った顔をして顔を赤くさせているんだろう。

「どこか行きたいとこあるか?映画、水族館、海までドライブなんてのもいいな」

「あ、あの、どこでも嬉しいです。先生と一緒なら……っ」

「たく、どこまで謙虚なんだなよ」

「ほ、本当にいつも、一緒にいられるだけで胸がいっぱいなんです」

「ひなた、こっち向いて」

「い、いえ、それは、ちょっと」

頑なに拒否され、ちょっと強引にひなたの顔をくいっとこちらに向かせる。

その瞬間、えっと困惑したような表情。

そしてその唇に触れるだけの軽いキスをした。


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