現代のシンデレラになる方法
「……さっきあんたが言ったことだけど、正直信じられない」
ショックでドアに手をかけようとすると、昴に止められた。
「待てって、ちゃんと聞けよ」
「何なの?だって何言ったって信じてくれないんでしょ?」
「いやだって普通、そう簡単に信じれられないだろ」
「どうして……っ?」
「俺、あんたに会えば言いたいことだけ言って、好きになってもらえるようなことしたことないし。それに、あんな酷く抱いといて好きになってもらえるなんて思わないだろ」
「好きじゃなかったらもうあんたになんか会わないし、助けてやったりもしない」
「だからそれはお前が兄貴が好きだから、我慢してやってたもんだど……」
だからもうっ。
昴の頭を両手で掴むと、ぐいっと私に無理矢理向かせる。
必然的にぶつかる目と目。
しかし、それは一瞬で、不意にいたまれなさそうに目線を外されてしまう。
「見て、私の目……っ」
その私の声に、昴がまた私を見る。
「……誰が映ってる?」
「俺……?」
私の瞳の中の自分を見つめる昴の隙をついて、強引にキスをした。
私達は今まで何度か体を重ねたが、キスだけはしなかった。
これが初めてのキス。
ただ私が唇をぶつけただけの、色気のかけらもないものだけど。
これで少しでも伝わってくれたらと願いながら、ゆっくり唇を離し目を開ける。
すると目の前には、突然の私からのキスに驚いたような昴。
その瞳には、今にも泣きそうな私の顔が映ってる。
そして私の瞳にも映ってるでしょ、昴の姿が……。
「……もう先生なんて見てない、昴しか見てない。私は東條昴っていう1人の人間が好きなの。お兄ちゃんが東條先生だとか関係なく」
頬に一筋の涙が伝う。
それはやがて顎を伝って白いパンツに透明なシミをつけた。
「ねぇ、ここまでしても分かってくれないの……?」
そうやって眉間を寄せたまま呆れ半分に微笑むと、ぐいっと頭を引き寄せられさっき私がしたよりもずっと深い深いキスをされた。
ねぇ、少しは分かってくれた……?
私の気持ち、少しは伝わった?
このキスはその答えととってもいい?
私は、彼に応えるように背中にそっと腕を回した。