現代のシンデレラになる方法
「せ、先生、今日は何が食べたいですか?」
「そうだなー肉が食べたい。牛がいいな」
「分かりました」
スーパー到着後、食品を見比べて次々と選んでいく。
そして、精肉コーナーでひなたが手に取ったのは10%引きになった、牛肉と豚肉がミックスで入ったひき肉のパック。
俺はというと、つい隣の棚にある、ステーキ用の厚切りの牛肉が目に入ってしまう。
「ひなた、こっちは?」
「そ、そんな高いお肉ダメです。しまってくださいっ」
即座に却下されてしまった。
高い?そういえば値段見てなかった。
値札を見ると1800円。
というか、払うの俺だし。
気にしなくていいのに。
「なんでこっちのがうまそうじゃん」
「大丈夫です。その高いお肉以上に、おいしい料理を作ってみせます」
おぉ、なんと頼もしい。
小さなスーパーだからレジは2つだけ。
店内も狭いものだからレジの列も1列で、あいた方のレジに次々カゴを持っていくっていうシステムだ。
その列の一番後ろに並んでいると、ふらっと割り込んできたお婆さん。
足が悪いのか杖をついている。
不意に俺達が並んでいたことに気付くと申し訳なさそうに振り向いた。
「あ、ごめんなさいねー。気付かなかったわ」
そう言って俺達の後ろに回ろうとすると、すかさずひなたが手を出して前を譲った。
「あ、あの、大丈夫です。どうぞ」
すると、ひなたの好意に会釈するお婆さん。
「あら、ありがとう」
精算が終わり、すぐレジから近くのテーブルがあいていたのに、ひなたはわざわざ遠いところへ。
さっきのお婆さんはというと、俺達より先に隣のレジへ通したのに品数が多いのかまだ精算中だ。
きっと、このお婆さんに譲ったのだろう。
足の悪いお婆さんがレジの近くで袋に詰められるように。
そういう気遣いを当たり前のようにやれるのがこの子だ。