現代のシンデレラになる方法
「さすが優しいな、ひなたは」
「えっ、突然どうしました?」
「さっきのお婆さんがさ、レジからすぐ近くのテーブルでレジ袋に詰められるようにしただろ?」
「いえ、そんなこと位……」
どうってことない、そんなの優しいって言われるうちに入んないって言いたいんだろう。
「そういう気遣いをさ、当然のようにやれる人はあまりいないよ」
「そ、そうでしょうか……?で、でも私は取り柄がないので、社会的に小さなことでも、貢献していかないといけないんです。できるだけ人様に迷惑をかけず、人畜無害を目指して」
人畜無害って。
思わず吹き出してしまう。
「いつもそんなこと考えてんの?」
「お、おかしいですか?」
「いや、すごいなと思って」
「す、すごくないです、本当にすごいのは先生みたいな人で……」
「え、なんで俺?」
そう言うと、ひなたが信じられないというように俺の顔を見上げた。
そして珍しく声を張り上げる。
「だ、だって、先生はっ、一番世の中に、たくさんの人に、貢献している尊い仕事をなさってるじゃないですか。もっと誇りに思ってくださいっ」
そんな力説しなくても。
思わず圧倒されてしまう。
「ど、どうも」
そして、そのまるで分かってないといったような、俺の返事が気に入らなかったようだ。
更にまくしたててくるひなた。
「せ、先生はすごいことをしてるんですから。人のお腹を切って開けて手術するなんて、一昔前だったら考えられなかったことです……っ」
そんな大げさな……。
「そんな偉業を成し遂げる先生は神様といっても過言じゃないとっ」
「神様って、さすがに言い過ぎだから」
そんな、ぶっ飛んだ発想に、つい笑ってしまう。
だけど本人はいたって真面目にそう思っているようだ。
「さっきは、そんなたくさんの人の命を助けてきた手に触れることができてとても光栄でした」
そう言ってペコリと頭を下げるひなた。
「じゃまた触る?」
「は、はい……っ」
そう言って、手を出すとちょっと躊躇いながらも嬉しそうに手を繋いでくる。
可愛いなー。
やっとなついてきた子犬みたいだ。