現代のシンデレラになる方法
俺のマンションの駐車場に着いて、唐突に慌て始めたひなた。
「あ、どうしよう、3人分じゃちょっと材料足りないかも……っ」
「俺買ってくるよ、何買ってくればいい?」
「いえっ、ちょっと私急いで行ってきます。みーちゃん、ワガママ言わないで大人しくしててねっ」
そう言って、ひなたは足早に駐車場から出て行ってしまった。
え、いきなり二人きりって気まずいんだが……。
だから自分から申し出たっていうのもあるのに。
こんな若い子と話す機会なんてほとんどない。
だって、まだ10代後半位だろ、下手したら高校生とか?
いや、前、ひなたがアパレルで働いてるって言ってたからそれはないか。
ほとんど無言で部屋にたどり着くと、とりあえずソファーに座ってもらった。
適当にテレビをつけリモコンを渡す。
「テレビ好きに変えていいから」
「はーい」
リモコンをパチパチしながら、棒付きのアメ、チュッパチュッパスをころころ口の中で転がしている。
やがてテレビはとある恋愛ドラマの再放送に止まった。
俺は何か飲み物でも、とキッチンへ。
「何か飲むか?」
「コーラありますか?」
「あいにく、うちにはないな」
「じゃジュースは?」
「野菜ジュースなら」
「げー、みーちゃん、野菜きらーい」
べーっと、舌を出して苦々しい顔をする。
その様子に、少しイラっとする。
…………抑えろ、抑えろ、俺は大人だ。
そしてこいつは信じたくないがひなたの妹だ。
「カフェオレは?」
「ガムシロップと牛乳いっぱいでお願いします」
「はいはい」
要望通り、ガムシロップ2個とほぼ牛乳で作ったカフェオレを出してやった。
「どうぞ」
そう言って彼女の前に差し出す。
一口飲んで、
「ガムシロップください」
「はい」
と要求され、言われた通りもう1個渡す。
どんだけ甘いのが好きなんだ。
それで3個目だけど……。
「もう1個」
しかしそれでも足りないと、遠慮がちに上目使いしながらお願いしてくる。
さすがにこれは、と止める。
「もうそれだけ入れれば苦くはないだろ」
「うーっ、甘いのがいいんですっ」
「だめだ、入れ過ぎだ」
そう言うと拗ねる彼女。
子供か。
そんだけ甘やかされて育ったんだ。