現代のシンデレラになる方法




「本当に何もいらないの?」

少し間を置いて、昴に聞かれる。


「……うん」

私は短くそう答えた。

何もいらない。

私は昴がこうして一緒にいてくれるだけで十分幸せだから。

正直、他に何もいらないよ。

だからそんなことに無駄に高いお金を使わなくていい。


私は布団の中で昴の手を取って握った。


「昴がこうして傍にいてくれれば、何もいらない」


そう昴に言うと、手をぎゅっと握り返された。


「どうしたの、そんなこと普段言わないくせに」

そう言って私の顔を見ながら微笑む昴。

「だってこうでも言わないと、あんたくそ高いプレゼント買ってきそうじゃん」


増えた当直だってきっとそのせいでしょ?

私のせいでそんな無理しなくていいのに……。

若いとはいっても夜勤がきついのは変わりないんだから。


私達はその晩、手を繋いで寝た。


……すごいな。

手を繋いで一緒に寝るという、そんな単純な行為が、好きな人とだとこんなに幸せを感じられるものだなんて。

本当私はこれだけで幸せ。

ずっとこうして2人で過ごしていけるのなら、どんな高いプレゼントだっていらないよ。



こうして誕生日も何事もなく過ぎていけるんだと思っていた。

まさか恐れていた事態が実際に起こるなんて、この時は思いもしていなかったから。


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