現代のシンデレラになる方法
プレゼントはいらないと言ったのに、昴の当直の回数は減らなかった。
なんで?
夜いないのは別の理由があるの?
そんな疑いを持ち始めていた頃。
職場の同僚からある噂を耳にしてしまう。
「この前さ、見ちゃったんだよね。昴先生が若い女の子と歩いてんの」
「嘘でしょーっ?超ショック」
頭が真っ白になった。
やっぱり、夜いないのは当直をしているんじゃない。
もしかして、その子と浮気してたの……?
だけど私は、知らないフリをしようと思った。
もしかしたら普通に女の子の友達かもしれないし。
それに私はこんなことで別れたくはない。
だけど、ついに見つけてしまったのだ、決定的なものを。
それを見てしまった時、同棲なんてするんじゃなかったと、心底後悔した。
夜、昴がお風呂に入っている間、テーブルの上に置かれていた携帯。
いつものようにテレビを観ていると、不意にその携帯がヴーヴーと鳴った。
ちらっと見るとその画面には、
宮沢 花梨
女の子の名前が……。
衝撃が走った。まるで脳天から雷を打たれたかのように。
だけど以前から不安に思っていただけに、結構冷静でいられた。
……なんて可愛らしい名前。
名前からして若さが伝わってくる。
恐らく昭和生まれじゃないだろう。
しばらくして静かになった携帯。
昴がお風呂から上がってきても私は何も言えなかった。
「お風呂入ってきたら?」
「……うん」
肩にタオルをかけて髪を乾かしながら言う昴。
私は促されるままゆっくり立ち上がった。
ヴーヴー。
思わず体が硬直してしまう。
また昴の携帯が鳴り始めたのだ。
タイミングが良いのか悪いのか、ちらっと盗み見るとそこには、さっきの子の名前。
昴は特に動揺する素振りも見せずにそのまま切ってしまった。
……それが答えなんだと思った。
私の前では出られない相手なのだろう。