現代のシンデレラになる方法
「たっくーん」
久しぶりの二人揃っての休日だっていうのに、突然、ひなたの妹が押しかけてきた。
そして二人掛けのソファーを占領し、甘ったるい声を出しならが俺の名前を呼ぶ。
ひなたでさえ名前で、しかもあだ名でなんて呼んだことないのに。
俺は返事をすることなく、妹の方へ冷たい視線を送る。
「これ3人で見に行こう?」
そう言ってテーブルの上に広げたのは、童話をモチーフとしたアニメ映画のパンフレット。
見た瞬間、顔が引きつってしまう。
無理もない。
ドレスを着たお姫様と王子様のキラキラした絵柄だ。
三十路男が興味を持つには困難を極める。
「……2人で行って来いよ」
げっそりしながら言うと、たちまち妹が騒ぎ出した。
「えー、みーちゃんお兄ちゃんと行きたいのにー」
「もうみーちゃん、わがまま言わないでっ」
「てか、そもそもひなたはこれ見に行きたいのか?」
ひなたも妹の趣味に付き合わされているんじゃないかと思って聞く。
しかし、肝心のひなたからではなく、すぐさま妹から返事が返ってきた。
「何言ってんの!お姉ちゃん、こういうの大好きだもんねっ?お家に何冊もボロボロの童話の絵本があるんだけど、毎日読んでたもん。でねー、みーちゃんにもいっつも読み聞かせてくれて……」
「いいからみーちゃん、お口チャック!」
そう言って妹の口を手で塞ぐ。
今では見慣れてしまったが、ひなたは未だに妹を子供のように扱う。
以前、妹に聞いた時、昔からお母さんの変わりにひなたが面倒見てくれたから仕方がないって言っていたが。
まぁ、問題は妹の精神年齢の低さにもあるとは思うんだが。
妹と話していると、まるで小学生か中学生かのように思えてしまう時がある。
きっと、母親変わりのひなたに存分に甘やかされて育てられたんだろう。
……まさか、もし俺とひなたとの間に子供が産まれたら、こんな風に。
目の前でぷーっと頬袋を膨らませる奴を見てゾっとしてしまう。
いや、そんなことはさせない。
俺がしっかり厳しく躾けてやるんだ。
そう決意を固くしたところで、新聞に目線を戻して思わずはっとする。
まるでひなたと将来一緒になることが当然かのように、自然に想像していた。