現代のシンデレラになる方法
駅構内にあるカフェ。
人通りが多いだけ、カフェの中もざわついている。
本当は改札の外に出てゆっくり話したいところだが仕方がない。
それでもさっきのホームで話すよりはずっといい。
俺はそのソファ席に相澤を座らせる。
「コーヒーでいいか?」
「……あ、あの、す、すいませんカフェオレで」
と小さく答えた。
レジで二人分の飲み物を頼んで席に持っていく。
相澤は申し訳なさそうに眉を八の字にしたまま、俯いている。
「よくよく考えてみれば今まで帰りはどうしてたんだ?」
「えっと、」
……まさか毎日泣きながら帰ってたなんて言うなよ。
「だ、大体残業があるので帰宅ラッシュより遅い時間帯で帰っていたんです。それでも、早く終わった日はわざと夜遅くまで残ってたりして……」
なんで、そんないらぬ苦労ばかりしてるんだ。
「今日はなんで乗ったんだ?」
「ちょっとでも克服しようかと、でも、ダメでした……」
「なんでそんなんで、電車大丈夫だなんて嘘ついたんだよ」
「えっと、」
口ごもる彼女。
さっきみたいに質問責めするのはだめだと分かってはいるのだが……。
こうもレスポンスが遅いと急かしたくなる。
「弁当作るの疲れたのか?別に、作らなくても、
「違います……っ!」
そう聞くとはっきりと、顔を上げて答えた。
目線はちらと合わせただけで、すぐ逸らされてしまったが。
「あ、あの違うんです……」
「何が違うんだ?」
「せ、先生の評判が悪くなると思って」
「評判?」
「あ、あたしなんかと関わったら、先生が皆に悪く言われちゃうんじゃないかって」
「皆って誰?」
「病院の皆に……」
いかにも相澤が考えそうなことだ。
この子はいつだって自分より他人を優先するから。
「俺が何を言われようと気にしなくていい」
「で、でも……っ」
「そんなことより、俺はお前の料理が食べたくてしょうがないんだが」
そう、ただ思ってることを率直に言っただけだったのに。
一瞬相澤の表情が固まったと思ったら、今度は両手で顔を覆って泣きはじめた。
「えっ?俺、そんな泣かせるようなこと言った?」
慌ててそう聞くと、顔を横に振る。
しかしこれでは、周りからの視線が痛い。
まるで俺が泣かしているようだ。
「どうしたんだ?」
一体なんでこんなに泣くんだ。