現代のシンデレラになる方法
とりあえず、当日指定された時間に行くとそこはとある高級ブティックだった。
店の名前と地図を何度も確認する。
間違いない、ここだ。
店内をうかがいながら、店の前を行ったり来たりしていると、あまりに不審だったのか声をかけられた。
「いらっしゃいませ、相澤様でらっしゃいますか?」
「は、はい……っ」
出てきたのは綺麗でスタイルのいいお姉さん。
どうして私の名前を知ってるんですか?
と聞きたくても声に出して聞けず、どうぞこちらへ、と言われるがまま店内へついていった。
ど、どうしよう、こんなところで買い物できる程お金持ってないのに。
そして連れてこられたのは、大きな試着室にある全身鏡の前。
その隣には、ハンガーにかかったフォーマルなワンピースドレスが並んでいた。
そこからお姉さんが次々と選んで、私の胸へあてていく。
こちらなんていかがですか?
それともこちらがよろしいでしょうか?
えっ、えっと、えーっと……っ
と答えるのが精いっぱい。
もう、目が回りそう。
しまいには、
「こちらでお似合いになるものを、見繕ってもよろしいでしょうか?」
と言われてしまった。
そしてチラと見えた値札の額に、心臓が飛び出そうになる。
こ、こ、こんな服、一月分のお給料でだって買えない……っ!
頭がクラクラしてきた。
これは、俺に恥をかかせないように、ここで服を買って来いってことなのだろうか。
だけどこんな値段到底払えない……っ
「あ、あの、も、申し訳ないんですけど……、私なんかには色々不相応で……っ」
「そんなことありません、お似合いですよ」
「いや、あの値段が……」
「それでしたらお気になさらず、もう代金は頂いているので」
「え?」
一体、先生はどういうつもりなんだろう。
どうして私なんかのために、こんなにお金を使って……。
あぁ、もったいない。
これだけのお金があればどこへでも海外旅行に行けちゃう。
とりあえず、今日払う分は必ず返そう。
よし、そうしよう。
月々分割でお願いすれば、私も払える。
せっかく先生と食事するんだ。
今日位、お伽噺のお姫様にでもなった気分でいこうじゃないか。