現代のシンデレラになる方法
そう思って意気込んでいるさなかにも、店員さんは着々と私に似合うというドレスを決めていてくれた。
そしてそれに合うバッグと靴を用意される。
取っ手のない長方形のバッグは手で抱えて持つらしく、クラッチバッグというらしい。
そして今まで履いたことのないハイヒール。
履いて歩いてみると足がかくかくしちゃう。
世の女性はこんな歩きにくいもので仕事をしているんだ。
そしていざ着替える時がきた。
「では、こちらに着替えて頂けますか?」
そして渡されたのは、白に近いアイボリー色のノースリーブのワンピースドレス。
フォーマル過ぎず、ところどころ品良くシックなフリルとレースがあしらわれた可愛いものだ。
思わず、見とれてしまう。
私の冴えない人生の中で、こんなお姫様みたいな服を着る日が来るなんて。
だけど肩が出ていて、胸元と背中が大胆にあいてる。
丈も短くてこれでは膝が丸見え。
私には露出が多過ぎる。
それにワンピースだから当然だけど、スカートなんて何年ぶりだろうか。
足元がすーすーしてちょっと居心地が悪い。
スカートはしょうがないとして、せめてもう少し上の方を隠したい。
これでは布に覆われてるのは胸と胴体だけだ。
「え、えっともうちょっと布地が多いものに……」
「夜はある程度露出があった方がフォーマルと言われているんです。それに心配なさらなくても、とてもお似合いです」
「で、でも」
「それに、プレゼントされる男性も喜ばれるかと」
喜ぶ……?
私のこんな粗末な体を見て?
全身鏡を見て戦慄する。
やっぱりこんな姿、世にも先生にも晒したらいけない。
もうどうしよう、お家に帰りたいよーっ。
でも、でも、と往生際の悪い私に店員さんもちょっと困り顔。
「男性があなたにプレゼントをする気持ちを考えたことがありますか?似合わないと思ったらこんな高価なプレゼントしないでしょう?」
プレゼントする気持ち……?
それは先生が、こんな私にでも少しは期待してくれてるってこと?
「そう思ったら少しは自信がつきませんか?」
はいと肯定的な意味で弱々しく答える。
それでもまだ自信のなさそうな私に、店員さんがぐっと背中を押した。
「それでも自信が持てないなら、背を伸ばして、胸を張って下さい。自信がついたように見えますから」
そう言ってにっこり笑う店員さん。
「行ってらっしゃいませ」
そして店員さん総出で見送られ、店を追いやられる。
そうだもうグズグズじてられない。
こうなったら覚悟しよう。
次の目的地の指定時間はもうすぐだ。