現代のシンデレラになる方法


「さ、最後はメイクですけど。今日うっすらしてます?」

「い、いえ」

恥ずかしながらも素直に答えた。

私は仕事中でも、外に出かけてもいつもスッピンだ。

化粧をした記憶があるのは、親戚の結婚式位だっただろうか。

社会人としてどうなのって感じだが、化粧ってする機会を逃すと一生しないものだと思う。

現に私は化粧道具をあまり持っていない。

そう、それも私なんかがっていう劣等感があるから、オシャレすることやメイクをすることが心底怖いのだ。


「普段から肌も塗らないんですか?」

「は、はい」

「おぉ、肌自信あるんですねー。ファンデつけなくても綺麗ですもんね」

「え、えぇっ?」

何か勘違いされてしまったようで、違うんですっ化粧をするのが気恥ずかしいんです、と必死に弁明すると美容師さんに笑われた。


「そうなんですね、でも少しは塗らなきゃダメですよ。紫外線とか怖いですからね」

そう言って私の肌にクリームを塗っていく。
その次に肌色の液体を重ねていく。最後は何か、ファーのような丸く柔らかいものを肌に優しくぽんぽんと叩かれた。

美容師さんからリキッドファンデーションや、フェイスパウダーやら聞き慣れない単語が出てきて終始ハテナだったけど丁寧に説明してくれた。

次は目元。

目をつぶらされ、また何か塗っていく。
合間に目を開けると、今度は、ペンのような先が細い筆のようになっているものを持っていた。
そして、そのブラウン色のペンで丁寧に瞼の淵にラインを引いていく。

そしてまつ毛にマスカラをつけて、何か温かいもので挟まれ上に引っ張られる。
意外と力を入れて引っ張られ、いたたた、と漏らしそうになった。


きっと世の女の子達はこうやって努力してるんだ。


あの綺麗な看護師さんや受付の女の子達を思い出す。
皆毎日、きっちり化粧してきていた。

すごいな、毎朝こんなことしてるんだ。



< 32 / 196 >

この作品をシェア

pagetop