現代のシンデレラになる方法
「どうぞ目を開けて下さい」
「うわ……っ、じ、自分じゃないみたいっ」
鏡を見てびっくり。
目の前に映っているのは確かに自分のはずなのに、まるで別人のよう。
「化粧ってすごいですよね。字の如く化けるってやつですよ」
「は、はい。本当に……」
「見とれちゃいました?」
「い、いや、見とれたなんて……っ」
でも本当に、びっくりした。
私でもこんなに変われるものなんだ……。
まつ毛なんてくるんと上を向いて、これだけで目が大きく可愛く見える。
「まだ終わりじゃないですからねー」
そう言って唇に薄いピンク色の口紅を引くと、その上から何かテカテカしたものを塗られる。
最後に、習字に使う筆より一回り大きな筆でピンク色の粉を付けると、両頬に優しく円を描くようにうっすら色をのせた。
「す、すごい頬に色をつけただけなのに、また雰囲気が変わった」
「チークって一番重要だと思うんです」
そうか、これチークっていうのか。
「どうしてですか?」
「だって頬がピンク色に染まってる女の子って、無条件に可愛いじゃないですか」
「な、なるほど」
「可愛いってこうやって作れるんですよ。だけど一番大事なのは、こんなメイクより笑顔です」
「え?」
「相澤さんは、ここに来てからずっと顔が強張ったままですから。顔は心を映す鏡だって言いますからね。笑顔を忘れずに」
「は、はい」
そう言って送り出してくれた。
あぁもう約束の7時になる。
最寄りの駅で待ち合わせしていた。
急ごうと走りたくても、慣れないヒールでは上手く走れない。
あぁ、本当にこの姿で会っちゃうんだ。
大丈夫かな。
私なんかがこんな格好してこんな化粧して、変じゃないかな……。
しかし悩んだってここで引き返す訳にはいかない。
そんな中電話が鳴った。
画面を見るとそこには先生の名前があった。