現代のシンデレラになる方法
震える手で通話ボタンを押す。
『プレゼント気に入ってもらえた?』
「は、はい、すいません、こんなにしてもらって、あ、ありがとうございました。あのお代は必ず返しますので……っ」
『だからプレゼントって言っただろ。俺が勝手にしたことだから気にするな』
「そ、そんな」
『で、今どこにいる?』
「えっと待ち合わせの駅の方に向かってて、もう着きます……っ」
『…………』
「せ、先生、どうかしました?」
『いや、あまりにも見違えたもんで』
「え、え、えっ!?」
きょろきょろ周りを見渡すと、紺色の細身のスーツに身を包んだ先生の姿を見つけた。
「……すげぇな、ここまで変わるとは思わなかった」
「い、い、いや、お、お恥ずかしい……で、す」
「え?何が?」
「も、も、もう、いろいろ……っ」
すると先生は感心しながら、私の顔から足元まで遠慮なく見つめてくる。
だ、だめだ、もう限界。
顔から火が出そう……っ。
「せ、先生、そんなに、あ、あまり見ないでください……っ」
いつもの困ったような顔をして先生をちらっと見上げた。
「も、もう、本当に恥ずかしくて……」
つい、恥ずかしさのあまり涙ぐんでしまった目で乞うように見つめる。
根負けしたかのように先生の目がそらされると、先生は黙り込んで顔を手で抑えていた。
「先生……?」
「……大丈夫だ、今日は健全に行くからな」
「は、はぁ」
何が大丈夫なんだろう。
よく言葉の意味が分からず、つい気の抜けた返事をしてしまう。
「とりあえず、上目遣いはもうするな」
そう言われても、背の高い先生と私とじゃ身長差があるから……。
私が見上げないと話しにならないんじゃ。
あれだけ、前は目を合わせろって言ってたのに。
一体どうしちゃったの、先生?