現代のシンデレラになる方法


「せ、先生。今日は本当にありがとございます。今日はなんだか魔法にでもかけられた気分です」

「そうか、じゃこれが最後の魔法だ」

前のショーウインドウ見てて、と言われ言う通りにする。
ガラスに映った自分を改めて見ると、本当に別人のよう。

先生が背後から何か取り出すと、首元にキラキラしたものがつけられた。

それは銀色に輝く宝石がついた華奢なゴールドネックレス。

まるで後ろから抱きしめられるかのようで、ドキドキしてしまう。


「う、うわ、すごく綺麗……っ、これ、まさか本物ですか?」

「小さいけど一応な」

目がちかちかしてしまう。

私の首に、宝石の王様、ダ、ダイヤが……っ!

ショーウインドウに映った私を見て、先生が微笑む。

「いいね、良かったシンプルなもの選んどいて」

「え、え、こんなのもらえません」

「いいから、いいから。それにこれ、そんなに高くないし」


……せ、先生のそんなに高くないの基準がよく分かりません。



「わ、私なんかにもったいないです。ダイヤもドレスも、私なんかに着けられて、なんだか可哀想です」

思わずショーウインドウから目をそらせてしまう。
やっぱりそう簡単に自信なんてつけられるものじゃない。


「今日は、私なんか、禁止ね」

「えっ」

「相澤は謙虚過ぎる、自分を卑下しすぎだ。だからこうやって世話したくなるんだろうけど」

「でも……」

「目をそらさずに見てごらん。目の前にいるのはちゃんと自分だよ」

そう言って先生は私の顔をショーウインドウに向かせる。

「相澤は自分が思ってるよりずっと素敵な女の子だよ」


素敵な女の子……。

本当に?自信を持っていいの?

「俺の言葉でも信用できない?」

私はそう聞かれ、首を横に振った。


「……ど、どうしてこんなに良くしてくれるんですか?」

「相澤が少しでも自分に自信を持てたらいいなと思って」


私のそれだけのために、これだけお金をかけてくれたんですか……?


すぐに自信がつける訳じゃないけど。

また、すぐ自分を卑下する言葉を使ってしまいそうだし。

だけど先生が素敵と言ってくれたなら、今はその言葉を信じたい。


先生がここまでしてくれたんだ、私も変わる努力をしなくちゃいけない。

先生の期待に応えたい。


せめて、少しでも自信があるように見えたら……


背を伸ばして胸を張る
なるべく笑顔を心がけて


今日だけは夢を見よう。
そう、私はお伽噺のお姫様。


「さ、エスコートさせて下さい。お姫様」

先生が私に手を差し出す。
私は、はにかみながらその手を取った。

「はい、よろしくお願いします」







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