現代のシンデレラになる方法
1品ずつ運ばれてくる料理。
その度にウェイターさんが説明してくれるが、やたら長ったらしい名前でいまいち頭に入って来ない。
そして、フォアグラだとかキャビアだとか高級食材の単語にいちいち反応してしまう。
一体このコースいくら位するんだろう……。
「先生はどうしてお医者さんになろうと思ったんですか?」
「親父が医者で成り行きでなった。でも、結構やりがいあるし今じゃ医者になって良かったと思ってる」
片手にワイングラスを持ちながら言う先生。
そういえば、こうやってちゃんと顔見れたの初めてかも……。
いつもはろくに目も合わせられないし。
ちゃんと喋れないのに。
お酒の力ってすごい。
「そっか、お父さんもお医者さんだったんですね。ご兄弟はいらっしゃるんですか?」
「1人弟がいる。これがクソ生意気な弟でさ、今研修医やってるよ」
「すごい、弟さんもお医者さんなんですね」
「すごくない、すごくない。あいつ俺以上にちゃらんぽらんだから」
話のさながら、先生の顔をまじまじと観察する。
「でも、皆同じ仕事だったら、話が合って楽しそうですね」
「そうでもないよ、親父となんかめったに会わないし。弟から電話で時々相談される位かな」
「そっか、やっぱりお医者さんて忙しいですもんね。もしかして、お母さんもお医者さんだったりするんですか?」
「いや、専業主婦。だけど、お嬢様だったらしくてさ家事全くやんねぇの」
そう言って、呆れたように笑う先生。
やっぱり、かっこいいなー。
切れ長なすっきりした二重に、すっと鼻筋の通った品の良い鼻。
これでお医者さんときたら、今までどれだけの女の子から好意を持たれてきたんだろう。
モテモテだったんだろうなー。
「だから、人の手料理なんてほとんど食べたことなくてさ。相澤の手料理食った時は感動したよ」
「そ、そんな大げさです」
「いやいや、本当。やっぱ、母親から料理教わったのか?」
「い、いえ。うち母子家庭なんですけど、母は仕事で夜遅くに帰ってくることが多くて、私が毎日料理作ってたんです」
「苦労してんだな。兄弟は?」
「私は妹が1人います。私と違って綺麗でオシャレで、アパレル関係で働いてます。」
そう言って、グラスのサングリアを飲み干そうとしたところで止められた。