現代のシンデレラになる方法
そんなことを考えながら、男子更衣室で服に着替え終えると、さぁ飲みに行くかと高岡先輩が肩を組んできた。
「え?」
「えって、今日は歓迎会だろ?」
「うわー、俺今日予定入れちゃったんですよね。すんません」
「はぁ?何やってんだよ」
「先輩から体よく言っといて下さい」
本当は嘘。
今日、歓迎会があることは、看護師から再三言われて知っていた。
しかし、俺はそういった類が嫌いだった。
あの看護師達に囲まれるのは病院内だけに勘弁して欲しかった。
「お前が来ないと、看護師達が機嫌悪くなんだろうが」
「そんなの知りませんよ」
そう言うと、俺の頭を小突いてくる。
この病院で、こんな憎まれ口言える先輩は高岡さん位だ。
更衣室を出た先には、1階の休憩室と会議室がある。
ここは大体、科関係なく医者が利用することが多い。
休憩室のテーブルの上にはバスケットに入った茶菓子が置いてある。
そこには、いつも小さな袋に小分けされたクッキーや、丁寧に包装されたブラウニーなどが入っていた。
「お、まだ残ってる」
休憩室を覗いて嬉しそうにそのクッキーをもらっていく先輩。
「それ茶菓子で置いてるのに」
「いいだろ、こんな残ってることめったにないんだから」
「手作りっぽいですけど、これいつも誰が置いてるんですか?」
「さぁ、患者さんの家族からの差し入れとかじゃないか?」
「それだったら、普通各科の休憩室に持ってくもんじゃないですか?」
ふとした疑問に、んな細かいこと良いんだよと先輩は袋からクッキーを取り出して食べ始める。
「それ、そんなに上手いんですか?」
「え、お前これ食ったことねぇの?すげぇ上手いって評判なのに。一つやるよ」
半信半疑に先輩から一つもらい口の中に入れる。
「あ、確かにうまい」
予想していた一般的なクッキーの味より、ずっとおいしいものでびっくりした。
程良い甘さで、クッキーの中心についてるベリー系のジャムがすごく合う。
だろ、となぜかドヤ顔の先輩。
自分が作った訳でもあるまいし。
飲み会に行く先輩と別れ、自分はいつも通り帰ろうと車を置いてる駐車場へ向かう。