現代のシンデレラになる方法
夜の21時、昴の言っていたバーに着いた。
もしかしなくても、まだちょっと早い……?
しょうがない気長に待つか。
ウエイターさんに、カウンター席へ通される。
店には仕事帰りの男性や、女性グループがちらほら。
メニューを見ながら、何を頼もうか考える。
予想はしてたけど、やっぱ高め……。
カクテル一杯、1400円て。
まぁしょうがない、店に入って一杯も頼まないなんてできない。
注文しようとしたところ、目の前でシャカシャカやっていたバーテンダーからカクテルを差し出された。
綺麗なピンク色の飲み物だ。
「あちらのお客様からです」
そう言って教えてもらった方を見ると、ソファー席で飲んでいた男性3人組のグループからだった。
ラッキー、出入り口から遠目の席だ。
にこっと笑って会釈すると、あちらから1人やって来た。
咄嗟にバッグから指輪を取り出すと、左手の薬指につける。
「良かったら一緒にどうですか?」
ちょっと紛れてた方が分かんないかも……。
「ありがとうございます、是非」
そう言ってグループの中に入れてもらう。
「え、結婚してるの?」
私の薬指に光る指輪を見て驚く男達。
「えぇ、たまに主人に内緒で1人で来るんです」
これは、しつこく誘われないための常套手段。
たまに、そんな人妻狙いの厄介な奴もいるが。
なんやかんや彼らと世間話をしながら時間を潰していると、派手目な女性1人とスーツ姿の男性2人を引き連れて現れた。
皆、年は30代前半から中盤てとこだろうか。
遠目から見ても分かる程、目鼻立ちがくっきりした美人だ。
化粧は濃い目だが顔立ちにとても似合っている。
身に着けているものも、そうそうたるブランド達。
バッグはエルメズのバーキンに、ピアスとネックレスはシャネルのでかいロゴの分かりやすいもの。
パッと見てブランド好きだってのが分かる格好だ。
うわー、いかにもこの人っぽいな。
それからは彼女の同行を徹底的にマークする。
しかし、昴来ないなー。
もう時計は22時を回っている。
もしかしてもう来ないとか。
しっかし、この人達もそんなに同じ女とずっと喋っててよく飽きないなー。
酔わされようとでもしてんのか、次々とお酒を勧められる。
だけど残念、私お酒強いのよね。
少し酔ったフリをしながら、談笑し続ける。