現代のシンデレラになる方法
そしてやっとのことでレジへ。
昴さんの財布から諭吉様が出ていく様子を見て、至極いたたまれない気持ちになった。
女性スタッフにレシートを断る昴さんに、すかさず横から「いいえ、くださいっ」と割り込む。
私にそんな大きな声が出せたのかと、びっくりする昴さん。
「すいません……っ、今日は私のために、どうもありがとうございました」
ちょっと強引な買い物だったけど。
センスの良い2人に選んでもらえて良かった。
自分では最低限の服しか買わないから。
「あら、まだ終わりじゃないのよ?東條先生も呼んでるから」
「えぇっ」
それには私だけではなく、昴さんも聞かされていなかったのかびっくりした様子。
「買い物に付き合わせたら悪いからさ、夜ご飯から声かけといたの」
「なんでそんなに、俺と扱い違うんだよ」
「え、当たり前でしょ?」
さも当然というような西原さんに、もう反論する気もない昴さん。
「和食屋さんの前で、集合ってことになってるから。それまでどっかでお茶してましょ」
そして、3人で飲食店のブースへ向かう。
その途中、西原さんがとある雑貨店へ吸い込まれるように入って行った。
「ちょっと、見てもいいー?」
「いいって言う前にもう入ってんじゃん」
めんどくさそうにそう言う昴さん。
私はそこのお店で、とあるピンキーリングに目を奪われた。
可愛い……。
思わず手に取って小指にはめてみる。
おぉ、ぴったしっ。
しかし値段を見て、思わず二度見してしまう。
うっそ、0、一つ多くない!?
だめだ買えないや……。
名残惜しくも指輪を外して、戻す。
「それが欲しいのか?」
その様子を見られていたのか、不意に後ろから昴さんに話しかけられる。
「えっ、え、いや、欲しくないですっ」
「嘘つけ、欲しいって顔に書いてあったぞ」
「だめです、本当これ以上は……っ、な、泣きますよっ!」
そう言って精一杯、目に力を込めて昴さんを見上げる。
「なんだその脅し方」
そう言って、昴さんが柔らかく笑った。
……初めてかも私に笑ったの。
ちょっと胸がほっこり暖かくなった。