現代のシンデレラになる方法
ひなたの部屋は3Fの右端から二番目にある部屋。
俺はいつも車で送った後、部屋の電気がつくまで見届けるよう待っているようにしていた。
しかし、今日はいっこうに部屋の明かりがつく気配はない。
なんだ、帰って即行寝たのか。
それとも階段で転んだか。
はたまたエレベーターが故障して閉じ込められたか。
まさか、また変質者にでも痴漢されたんじゃ……。
なんてありとあらゆる可能性を考えながら、心配になってひなたに電話しながら部屋へ向かう。
すると、電話の向こうから、部屋にいる、何でもない、との返事が。
まぁ、本人がそう言うなら、と電話を切って引き返そうとした時、不意に引き止められた。
真相を聞いてびっくり。
まさか、電気が止められたなんて。
そんなこと現実に起こりうるんだな……。
ひなたが住む、このおんぼろアパートを初めて見た時と似た感覚に陥る。
どうしてこいつは、こんな極貧生活を送っているんだろうか。
そんなに事務員の給料は低いものなのか。
それで、毎朝俺に弁当を振る舞っていたのか。
そして、ひなたの生活を勝手に想像してしまう。
部屋には丸裸の豆電球が一つぶら下がり。
中心にはひび割れたちゃぶ台につぎはぎだらけの雑巾。
もしかして、テレビやパソコンなんてものはないんじゃ……。
必要最低限な家具と生活用品で、質素な暮らしを強いられている姿が思い浮かぶ。
いやいやいや、いつの時代だよ。
まさか、ここまでひどくないだろ。
浮かんだ妄想を必死に打ち消す。
しかし、なんで養ってやるって言ったときに素直に従わないんだ。
俺といればもっと楽な生活ができるのに。
なんで俺に尽くすことばかり考えるんだろう。
どうして、もっと俺を頼ってくれないんだ。
だから、ひなたのことが心配でしょうがないんだよ。