youth diaryーぼくらの物語ー
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季節は春。の新学期で新学年。
下駄箱周辺は新しいクラス表が貼られているせいで賑わっていた。
あちらこちらから聞こえる声をシャウトするように、ケータイの音量をあげて歩く。
「…おはよーございます」
保健室とプレートが下がった扉を開ける。
「あ、おはよー 随分早かったのね、登校時間内に来るなんて」
白衣を纏い、薬品棚を整理しながら聞いてくるのは保健医の与辻(よつじ)先生。
「…うん、まぁ」
曖昧に答えた私に、与辻先生は優しく笑うだけだった。
笑顔だけなら白衣の天使とか呼ばれても違和感ないのにな…。
「花奏(かなで)ちゃん、聞こえてる」
「あ、ごめん…ねぇ、私何組になったの?」
荷物を置きながら聞くと、与辻先生は「見てきてないの?」と言いながら自分のデスクに戻って行く。
「花奏ちゃんのクラスはね…」
用紙をペラペラ捲りながらぶつぶつ言ってる先生を見ること数分。
「…先生、デスクの上汚いね」
「うるさいな 後で片付けるわよ…あ、あった!花奏ちゃんは3組。2年3組よ」
「ふーん…」
HRが始まるまでまだ時間あるな…。
「…その、生活には慣れた?」
「うん」
「もう平気なの?」
「うん」
「無理してない?」
「うん」
「そう…なら良かった」
「うん」
与辻先生からの質問責めから開放された私は座っているイスの横にあるソファに寝転んだ。
『もう平気なの?』
脳内で再生される与辻先生の声と…。
「はぁ…寝る。」
イヤフォンを耳にあて、音量を最大にして顔を伏せようとした時、ガチャ。
誰かが保健室に入ってきた。