【短編】 たたり
記憶
 
 そのころ。

 ぼくは、いつだっていそがしかった。

 小五にでもなれば、学校の勉強にクラブ活動、進学塾は当たり前。

 クラスで仲間はずれになりたくなければ、流行のゲームの情報を仕入れたり、テレビも見なくてはならない。

 だから。

 一人で下校する時は早足になる。

 次の予定が待っているから。

「伊藤君! 前、前っ! 電信柱が!」

「え?」

 女の子の声で顔を上げた時には遅かった。

 ぼくの目の前すぐには、電信柱が迫っていたからだ。

 あ。

 なんて思う暇も無い。

 ガイーーーンッ!!!

 通学路中に響く大きな音をたてて、ぼくはおもいきり、電信柱に頭をぶつけてしまった。

 
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