【短編】 たたり
さっき電柱にぶつかる前には、絶対こんな首はなかったはずなのに。
あわてて立ち上がって、前を向くと。
今度は吉田さんのすぐ後ろ。
さっきぶつかった電信柱のすぐ側に、片目の無い、顔が半分こわれかけた女のヒトらしきものがいた。
もちろん。
これも、今の今まで見えてなかったモノだった。
それが耳まで避けた口をゆがめて、にやりと笑ったところが、ぼくの限界だった。
「うわああああああああ~~~!!!」
逃げよう。
逃げよう!
逃げよう!!!
「うぎゃっ!?」
力いっぱい走り出そうとしたとたん。
うでを何かに思い切りつかまれた。