彼女いない歴が年齢の俺がもうすぐパパになるらしい。
「今日は現役女子大生たちなんスよ。しかもセシル女学院大の!」
ああ、そこ。お嬢様大学の名を騙った『合コン女子大』じゃん。
見た目だけはミッション系の皮被って可憐だけど、あそこの女の子がみんな合コンで自らオトコ狩りに行ってるって有名な話だろ。セシ女の学生になった途端狂ったように遊びまくって8股してた姉貴が「肉食女子の巣窟」って言ってたんだから、これは間違いない。
ただでさえ合コンなんて怖ぇのに、相手がセシ女ってホントないわ。
「悪いけどパス」
あっさり答えた俺に、山岡が一瞬ぽかんと口を半開きにさせた。三度のメシより合コン好きの山岡は、『女子大生』に食いついてくることはあっても断られることがあるとは想定していなかったみたいだ。
「え……?でも女子大生っすよ?しかも高美女率で有名なセシ女っすよ?」
「いいから。おまえらだけで愉しんでおいで」
「花嶋先輩今カノジョいないんでしょ……?それとも俺らに隠してるだけでホントは本命いるんスか?」
問いにははっきりと答えず、山岡の目をじっと見詰めて。それから見せ付けるようにふっと涼しい笑みを送ってやる。
やかましく騒いでいた山岡は一瞬にして静かになった。わずかにその顔が赤くなっている。
何も言わなくても意味ありげに笑ってみせれば、あとは勝手に想像してくれる。やたらなことを言うよりも思わせぶりに沈黙したほうが余計な詮索を受けずに済むものだ。
これは俺が社会人になってから培った数少ない、そして想像以上に有効な『かわし』のスキルだった。