彼女いない歴が年齢の俺がもうすぐパパになるらしい。
「あのな、南。悪いけれど」
「あ、断る気満々だ。こっちは『ごはん』ってだいぶハードル下げてるんですけど?それでもダメなんですか?」
落ち着け、俺。頼むから。ここで相手のペースに飲まれるな。
「……生憎、俺はね。『南が思うよりずっと子供なんだよ。恋愛するとみっともなく公私混同しちゃうタイプでね』」
どうにか記憶の中に埋もれえかかっていたフレーズをひっぱり出す。
「『だから社内恋愛だけはしたくないんだ』」
駄目押しにココで笑っておけと航希に言われた通りにしてみる。
南は一瞬呆けたように俺の顔を見詰めてきた後、山岡のように顔を赤く染めた。それからかわいらしい顔を不満そうに歪める。
「……だったら莉子先輩とはどうなんですか」
「桐谷?あいつはただの同期の飲み仲間だよ」
「じゃあまりあ先輩は?」
その名前を出されて、動揺のあまり肩が揺れそうになった。
------------落ち着け。