愛してるのに…
誰もいない階段で

俺は座り込む。

「藤ヶ谷…愛してる」

つぶやいてみた。

静かな階段で反響する俺の声。

つぶやいたって辛いだけなのに。

届くはずもないのに。

藤ヶ谷を思うと胸が痛む。

ふと、さっきの撮影のことを思い出した。

唇に手をやってみる。

確かに触れた、

触れ合った俺たちの唇。

今まで触れることのなかった
唇同士が触れ合った。

ペットボトルの回しのみとはちがう。

事故だけど、偶然だけど
嬉しかった。

とても。

一粒の涙が頬をつたう。

悲しくてないているのか
嬉しくてないてるのか
自分でも理解できなかった。

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