赤い電車のあなたへ
バタバタと複数の足音が聞こえて、ガラッと遠慮なくふすまを開いたのは子ども達だった。
「鞠おねえちゃん! 大丈夫!?」
と花を摘んできてくれたのは真里ちゃん。
「おなか痛いの? これ食べたらいいよ!おかあさんが言ってた」
となぜかネギ焼きをくれたのが健くん。
「あたま痛いの痛いのとんでけぇ」
と額をさすってくれたのは美保ちゃん。
「ちがわい!熱だぜ! そういう時はだな、卵酒がいちばんだぜ」
そう言って鍋ごと置いて飲んでくれと勧めたのが勉くん。
「病気には甘いのがいいよ~」
と綿菓子をお見舞いにくれたのが恭子ちゃん。
子どもたちに混じって近所のおばさんまで「風邪にはこれ! みかんだよ。うちの庭でなったの。たんと召し上がれ」とダンボール箱に持ってきてくれた。
ぺんぎん屋の子どもたち十何人に加えて大人までお見舞いに来てくれたから、狭い部屋はぎゅうぎゅう詰めになる。
でも……
みんなの思いやりや温かさが身にしみて、わたしは思わず涙を流した。
故郷ではわたしが風邪をひい休んでも、誰もが無関心で心配なんかされなかったのに。