赤い電車のあなたへ
けれど、病気の神さまはよほど気まぐれでイタズラ好きらしい。
みんなから優しさや思い遣りを溢れるほど受け取ったのに、わたしの熱は夜から深夜にかけて下がるどころか逆に上がっていったのだから。
もちろん熱冷ましや風邪薬も飲んだし、氷まくらや氷のうで頭を冷やした。
それでも夜の7時の時点で37度5分だった熱が、夜の11時を過ぎるころには39度6分まで上がって。
朦朧としてきた意識のなかで、もう体温計で計りきれないとかなんとか、叔父さんと夏樹の会話が聞こえた。
苦しい。
言い表せないくらい苦しい。
体が自分のものじゃないみたい。頭から切り離されてぜんぶロボットになったのかも。
ちょっと動かすだけであちこちがギシギシと軋んでる。
重くて自分じゃ動かせないけど、膝とかの節々が意味もなく痛いし。筋肉が悲鳴を上げてる。
なんか身体中がどんどんと泥の中に沈むみたい。呼吸もうまくできない。
松田診療所は……だとか近い病院はとか、途切れ途切れに会話が耳に入ってくる。
先生は出張で朝にならないと戻らない、と叔父さんが言ってた。