赤い電車のあなたへ



ボソボソとしばらくやりとりが聞こえた。たぶん、わたしに配慮してるんだろうと思う。


やがて、叔父さんが車でとか何とか言って間もなく、わたしの体が持ち上がった感覚があって。しばらく揺られた後、車のシートらしき感触を背中に感じた。


たぶんシートを倒してわたしを横たえてくれたんだと思う。


「鞠、じきに楽になるからな」


毛布か何かの重みを感じながら、夏樹の励ます声がわたしの頭に響く。


それは、わたしだけにくれる優しい響き。


夏樹はわたしの額に手を当てた後、さっと頬に触れたらしい。


すると、不思議。
もう十分熱が上がってるのに、夏樹が触れた部分がさらに熱く感じた。


どうしてかな?

それなのに、すこし楽になった……気がする。


車のエンジンがかかってしばらく揺られてる間、夏樹はずっとわたしの頭を撫でていてくれた。


そして、空いた手はわたしの手をギュッと握りしめてくれて。


わたしは……


ほたるにごめんなさい、と謝りながら少しだけ握り返した。


すると、夏樹も強く強くわたしの手を握りしめてくれた。


「大丈夫、俺が着いてるからな」


そんなふうに励ましてくれた夏樹だけど。


わたしはほたるの顔がよぎって、どうしても返事ができなかった。



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