赤い電車のあなたへ
封筒から出てきたのは、わたしが描いたあの人の笑顔。
「早く元気になるようにと思って。勝手に持ってきて悪かったけど、おまえの一番の薬がそれだもんな」
そう言って夏樹は早くよくなれよ、と頭を撫でてくれた。
「……ありがとう」
喉がイガイガガラガラでろくに声を出せなかったけど。どうしてもお礼を言いたくて搾り出した声は、やっぱりひどかった。
それでも夏樹は気にしない風で、あまり声を出すなと言ってくれた。
ありがとう、夏樹。
どうしてあなたはこんなに優しいんだろう。
やっぱりわたしがドジ過ぎて見てられないから?
そうなのかな、やっぱり。
わたしは迷子になった小2の頃からちっとも成長してないのかもしれないな……。
すこし落ち込んだ3日目。やっと熱が下がって楽になったわたしは、あの人の笑顔を看護師さんに頼んで壁に張ってもらったんだけど。
それを見たお医者さんが意外なことを言った。
「もしかして……この人は。去年の夏に地質調査に来たひとりじゃないかね?」