赤い電車のあなたへ
5月~皐月の風




「ほら、夏樹行くよ!」


「むぐむぐ、待てほ!」


わたしはご飯をかき込む夏樹の耳を引っ張り、お味噌汁を飲み込むのを待たず玄関に走る。


「早くしないとほたる来ちゃうし!」


「わ、待て待て~っ!」


ほたるの名前を出せば、夏樹はあわて方が違う。


猛スピードでご飯とお味噌汁を食べ終え、食器を流しに置いて駆けつけた。


「行ってきまーす!」


「きや~す!」


「ああ、行ってらっしゃい」


台所の食卓から健太叔父さんがのんびりした声で送り出してくれた。





2人一緒に走っていると、駅前でほたるが手を振ってるのが見えた。


「おっはよ~! 今日も元気なお二人様で」


わたしと同じ1年生のほたるは、ベリーショートでさばさばした性格のスポーツ少女。


背はあんまり高くないけど、朝露高校のバレー部で活躍中。


わたしが朝露に来て2番目に良かったのが、ほたると友達になれた事かな。


あんまり女の子っぽくない男勝りなほたるは、わたしの気性にはぴったりで。


3番目はこの自然豊かでゆったりとした朝露の環境。


そして1番目はもちろん……。

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