赤い電車のあなたへ
「おお、おお。久しぶりだのう」
龍太郎おじいさんは3週間ぶりに来たわたしを歓迎してくれた。
『ごめんなさい。ちょっと病気してたりテストがあって』
いつものようにスケッチブックにサインペンで文字を書き、やり取りをした。
「ほうか……大変じゃったの。ならば、こうしてまた会えたのも縁じゃな」
「えん……?」
その字はどうだったかな、と思いながらスケッチブックにわたしは
“緑ですか?”
と書いてしまった。
それを見た龍太郎おじいさんは「ほほ」と愉快そうに笑う。
「そうじゃなあ、。緑も縁も変わらぬものじゃな。どちらもなくしてから大切さがわかるもの」
緑と縁。
似て非なるものだけど、龍太郎おじいさんにはどちらも感慨深いものがあったみたいで。
「緑と言えばな……別れた妻が連れて行った幼い息子は大自然が好きじゃった。動物や虫が好きでな。庭にでては土いじりして。生きていれば今は45歳くらいか……孫もおるかもしれんな」
さすがにその時の目は寂しげで、わたしの心が痛む。
こういう時はどうしていいかわからない。
自分だったらどうして欲しい? ない頭で一生懸命に考えた結果、わたしは龍太郎おじいさんにある話をせがんだ。