赤い電車のあなたへ



あれ以来、わたしは変わった。


生きるのに張り合いが出てきて、やっと生きててよかったと言えるようになった。


お母さんとも仲直り出来たし、朝露に来て友達も肉親も手に入れた。


本当に、あの人。龍太さんには感謝してるよ。


だからなおのこと、逢いたい。わたしの人生をより良くしてくれたお礼をしたい。





「また、龍太さんのこと考えてるの?」


ほたるの控えめな声がして、わたしは我にかえる。
いけない! 今はほたると旅行の話をしてたんだ。


「あ、ごめん。どうして夏樹と行かないの?」


改めて訊ねてみると、ほたるは小さくため息を着いた。


「その日は夏樹が用事あるって。立野先輩とずーっと前から約束してたらしいし。
悔しいからさ、女の子でバケーションを楽しもうよ!」


バケーションなんてちょっと古い言い方に、すこし笑えた。


予約の日付を見れば、7月の27日と28日か。ぺんぎん屋は親戚筋の人が手伝うらしいし、2日なら何とかお休みをもらえるかな。


龍太さん探しは、前日の土日にすればいいし。せっかくの夏だし、わたしもたまには息抜きしなきゃね、と思った。



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