赤い電車のあなたへ
「あ~ギリギリセーフ!」
ホームから3人で駆け込んだ瞬間、プシュッと電車のドアが閉まる。
クリーム色の車体。この電車を逃すとあと30分待たないと次の電車が来ない。
分刻みの都会の過密ダイヤに慣れたわたしは当初戸惑ったけど、今はそれがいいって前向きに受けとめてる。
通勤通学の時間帯でも20分から30分置きのダイヤ。
3両編成の中は主に朝露高校の生徒で。
初夏に相応しい爽やかな水色のスカートと、黄色いリボンのセーラー服。
男の子はオシャレなブレザーとチェックのズボン。
山間部の高校にしてはなかなか洒落てて、この制服が着たくてわざわざ朝露に進学する子もいるみたい。
ま、そんなことはわたしに関係ないな、と考えるうちにガタンガタンと車体が揺れ始める。
「ひい~5月に走るとさすがにあちいな」
夏樹が上着を開き、シャツをバタバタさせてる。
「はい、ハンカチ。汗だくじゃない」
「お、サンキュー」
ほたるが余分に持ってるハンカチを夏樹に貸す。
それもすっかり見慣れた光景になってた。