赤い電車のあなたへ
「ほたる、どうせならわたしが貸すよ。叔母さんたちには気まずいでしょ?」
本当なら出してあげる、と太っ腹なところを見せたかったけど。やっぱりわたしにも5000円は大金だから。
わたしが貸すことを申し出ると、ほたるは最初躊躇した。
「ありがとう。でも、大丈夫なの? あたしに貸して平気?」
ほたるが心配してるのはお金のこともだけど、たぶん一番は龍太さん探しのことだ。自分が借りたらわたしの電車賃が無くならないか、って。
「大丈夫! ほたるが心配しなくていいよ。まだすこし余裕があるから」
本当は違うけど、うそも方便。わたしに遠慮してしまい、せっかく楽しめる旅行をダメにしたくないし。
「うん、平気! そんなにひとの懐事情を気にするくらいなら、夏樹の事でも考えてなよ」
わたしがべつの話題に水を向ければ、ほたるは分かりやすいくらいにパッと頬を染める。
「な……夏樹は関係ないじゃん!でもありがとう! 必ず毎月1000円ずつ返すからね」
ほたるは5000円が入った封筒を大事そうに持ち、うきうきしながら帰っていった。
旅行まであと一週間。わたしもなんだかだんだん楽しみになっていった。